ゆで卵の戯言

26歳SIer勤務の男の戯言です。

【映画感想】Coda(コーダ) あいのうた

はじめに

映画「Coda コーダ あいのうた」は2022年に公開された、シアン・ヘダー監督/エミリア・ジョーンズ主演のハートフルフューマンドラマです。
原作は「エール!」という2015年に公開されたフランス映画で、本作はハリウッド版リメイクとなります。リメイクではありますが、フランスとアメリカの違い等もあり、どちらも違った作品としてとても面白いです。

ちなみに、CODAとは、「Children of Deaf Adults(=耳の聞こえない両親の子供)」という意味であり、聾唖者の家族との絆と様々な葛藤との間で、音楽を通してそれぞれの生き方を見つけていく映画となっております。興味のある方はぜひご覧ください!


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公式サイト引用

当記事には若干のネタバレを含みますので、気になる方はご注意ください。

公式サイトはこちらです。

あらすじ

アメリカの自然豊かな港町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人で暮らしています。
ルビーは家族の中で唯一の健聴者であり、とても家族思いのため、耳の聞こえない家族のために、小さいころから「通訳」として生きてきました。
漁で生計を立てている家族のために、毎日朝早くから船で漁に出てから学校に向かう生活を送っていました。
学校では、家族のことを馬鹿にされることも多く、友達は決して多くありませんでしたが、ルビーには密かに憧れている同級生マイルズがいました。
新学期になり、ルビーはマイルズと同じ合唱のクラスを選択します。
歌うことは好きだが、人前で歌うことは恥ずかしく、初回の授業ではルビーは逃げ出してしまいました。ですが、先生に謝りに行った際、先生はルビーの才能に気付きマンツーマン指導も行い、超名門音楽大学への進学を強く勧めます。

学校で行われる発表会に向けてマイケルとルビーはデュエットすることになり、練習を通して二人は急接近します。実はマイケルも家族に悩みを抱えていました。親はマイケルをルビーが勧められた超有名音楽大学に進学させるため、厳しく教育してきており、歌を歌うことがそこまで楽しくありませんでした。ギターを弾くことも進学には不要と禁止されているため、ルビーの家でギターを用いて練習することになりました。
すると、練習していることを知らない両親が、昼間から大声で営みを始めてしまい、マイケルとの練習は中断。両親、ルビー、マイケルの4人で会話を始めますが、両親はマイケルに避妊するよう手話で伝えるのですが、その手話(ジェスチャー)がかなり強烈(笑)で、ルビーはマイケルを追い返しました。
次の日、ルビーが学校に行くと、昨日父親がマイケルに伝えたジェスチャーが他の生徒にも伝わり、陰でバカにされてしまいます。ルビーはマイケルを避けるようになり、マイケルは仲直りしようと努力します。

そのころ、漁船監視員を乗船させなければならないという制度が作られ、獲った魚を耳が聞こえないことを良いことに安く買い叩く卸業者と漁師の間で対立が起きました。その中で兄が労働組合を作って自分たちで魚を売ると言い出します。
つまり、ルビーの通訳をあてにして事業を始めようとするのです。ルビーはこれまで「通訳」として生きてきたこと、音楽大学に行きたいことを家族に初めて打ち明けますが、家族としてはルビーにいてもらわないと困るため、もちろん進学には反対します。
マイケルとのいざこざのこともあり、ルビーは両親に反抗します。

次の日、ルビーは漁に行きませんでした。実は、その日から国の制度で漁船監視員を同乗させなければならず、父親と兄の耳の聞こえない二人で漁をしていたことで、監視員に沿岸警察を呼ばれ免許停止になってしまいます。
その時ルビーはマイケルをとっておきの場所に連れていっていました。そこは湖で崖から飛び込んだら許すと言われたマイケルは意を決して飛び込みます。そして仲直りを果たす二人は同じ大学に行こうと決意します。
帰宅すると、免許停止になった父親と兄、その責任はルビーにもあると言う母親と喧嘩をしてしまいます。裁判所での違反金の話もあり、ルビーも悩んだ挙句、進学を諦めてしまいます。
それでも先生とのマンツーマンレッスンなどもあり、ルビーの歌声はどんどんと磨かれていきます。
組合事業も大きく取り上げられ、軌道に乗りつつあるものの、先生とのレッスンに遅れてしまう等、ルビーのやりたいことが制限されていきます。先生も期待している分、音楽に打ち込まないルビーに対して苛立ちはじめますが、ルビーの気持ちを大切に引き出していきます。

そして訪れた、学校で行われた発表会に、ルビーは家族を招待します。しかし、聞こえない家族は手話で夕飯の話を始めるなど退屈している様子。最後にルビーとマイケルのデュエットがあり、家族はルビーが歌っている声は聞こえませんが、周囲の反応からみんな感動しているのだと理解します。
帰宅後、父親はある方法を使ってルビーの歌声を初めて聴きました。そして、とても大きな決断を下します。

最後にはとても大きな大きな感動が待っています。

感想

この映画を見ての率直な感想は、家族の在り方に「普通」なんてものはないんだということでした。
耳が聞こえることが普通。喋れることが普通。周りを気にして静かにするのが普通。世の中には「普通」という言葉が溢れていますが、そもそも私の、あなたの、「普通」は本当に「普通」なのでしょうか。
この家族は、食卓で勉強している娘の横で食器を大きな音を立てて準備したり、食事中に音楽はダメだがマッチングアプリはOKだったり、学校に迎えに来たピックアップトラックで大音量のBeatを響かせたりと、なかなかぶっ飛んでいます。それでも、これがこの家族にとっては「普通」であり、周りの目は気にしません。
ルビー自身は恥ずかしく感じ、腹を立たせますが、両親はそんなことは露知らず、とても笑顔で楽しく生きています。そんな笑顔にルビーも仕方なく受け入れている様子ですが、ルビーにとってもそれが「普通」なんだと思います。
マイケルの家族にとっても、有名音楽大学に進学することが「普通」で、マイケルもそれに従って生きています。

耳が聞こえる「普通」、耳が聞こえない「普通」、様々な「普通」がひしめき合うこの世界で生きるために、何が大切で何を信じるべきかを教えてくれる映画だと思います。

また、配役についても、監督のこだわりが見え、本当に耳の聞こえない俳優を起用したことでのリアルな会話が、より鮮明にCodaとして生きるルビーの心情が見えたと思います。

この映画はぜひ皆さんに見ていもらいたいと思える映画でした。興味のある方はぜひご覧ください。