ゆで卵の戯言

26歳SIer勤務の男の戯言です。

【映画感想】ちょっと思い出しただけ

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はじめに

映画「ちょっと思い出しただけ」は監督・脚本 松居大悟/主演 池松壮亮伊藤沙莉の、とある一日を題材にしたカップルの出会いと別れを描いたヒューマンドラマです。
題名の通り、あることをきっかけに過去数年にわたる記憶を「ちょっと思い出す」という構成でとても面白い映画です。
公開している映画館が少ないのが残念ですが、非常に面白かったので興味のある方はぜひご覧ください。

カップルのワクワクとイライラ、モヤモヤ等様々な感情に対して多くの方が共感できるのではないかと思います。
公式サイトはこちらです。

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この先はネタバレを含みますので、ご注意ください。

あらすじ

2021年7月26日、雨の夜中にタクシーを運転するショートカットの女性運転手・野原葉(のはらよう・伊藤沙莉)は、ある女性を乗せていた。
彼女が「あたし、今日が誕生日なの。」というと、葉は「おめでとうございます。」と笑顔で答えるが、乗客は「昨日まで死にたいと思っていた。」と告白し、その話に耳を傾ける葉。

葉は様々な人間模様が垣間見えるこの仕事が好きだった。
その後、ミュージシャンの男性を乗せて走る葉だったが、その男性がトイレに行きたいと言ったため、とある劇場にトイレを借りに行く。

一方、2021年7月26日に33歳の誕生日を迎えた佐伯照生(さえきてるお・池松壮亮)は、いつも通り猫に餌をあげて仕事に向かう。その途中地蔵に手を合わせ、公園のベンチに座って妻を待っていると言う50代ぐらいの男性ジュンもいつも通りだと、軽く挨拶をして通り過ぎる。
照生の仕事は劇照明アシスタントで、その日の講演も無事終了した。
劇場の片付けが終わり、何もなくなった舞台で照生は踊りだした。実は照生も昔ダンサーだった。
その姿を陰から見つめる女性の姿があった。その女性とは、葉だった。
トイレ休憩のため立ち寄ったが、待っている間に歩き回って劇場内に入っていたのだった。


その1年前の2020年7月26日、猫が押入れを漁っていると、とあるバレッタが出てきた。長髪の髪をずっと束ねていたものだった。
それは1年前に分かれた彼女からのプレゼントだった。その彼女というのが、葉であった。
1年前に足のケガでダンサー人生を諦め、長かった髪をバッサリと切ってしまう。もうバレッタを使うこともない。
その日すっきりとした照生は、帰り道に後輩ダンサーの泉美に会い、馴染のバーで常連客も含めて誕生日を祝ってもらった。

そのころ葉は、合コンに参加していた。あまり乗り気では無かったが、途中タバコを吸うために外に出ると、別の合コンで来ていた康太と出会う。康太は葉にライターを貸し、そこから康太は葉をナンパする。
当時まだ照生が引き取った猫をアイコンにしていた葉は、康太にその場でアイコンを変えさせられる。
二人とも別々の恋愛に進んでいる途中であった。


さらに1年前の2019年7月26日、葉はジュンがいる公園に寄って、ジュンと話をする。
「待っても来ない場合ってどうしたらいいんですか?」葉が聞くと、「たまには、、迎えに行っても良いかもしれませんね。」と答えるジュン。
その言葉で照生を迎えに行った葉は、足を怪我している照生を家までタクシーで送ると言う。
実は、それまで2週間連絡がなかった葉は照生のことを心配していたのだが、照生は葉に甘えてはいけないと思い連絡をしていなかった。
元々二人の距離は遠くなっており、会いたい葉と逃げたい照生。
「ずっと会話なんてなかったのかもね、、、お客様、到着しました。降りてください。」と照生を客として降ろしてしまう。去り際、照生を応援するプレートのついた誕生日ケーキを無理やり渡して、去っていく葉。それを見て立ちすくむ照生。
「追いかけてこねぇのかよ。」と悪態をつく葉であった。
これで二人は別れてしまう。


2018年7月26日。照生の横には付き合って1年の葉が寝ていた。
朝起きると枕元に誕生日プレゼントであるバレッタが置かれていた。
二人はラジオの音楽に合わせてストレッチをして、猫に餌をあげて、地蔵に手を合わせて、いつも通りの毎日を過ごす。
照生がバイトしていた水族館に閉館後侵入しデートをしたり、タクシーを使ってドライブしたり、家の屋上で花火をして、部屋でケーキを食べながら映画を見る二人。
すると照生は、「来年の誕生日プロポーズしようかな。」と何気なくつぶやいた。
そこには、照れや嬉しさでじゃれ合う二人の姿があった。


2017年7月26日。照生の29歳の誕生日。
友達以上、恋人未満の照生と葉だったが、葉は照生のダンス稽古場に誕生日プレゼントを持ってくる。しかし、そこで泉美にプレゼントをもらっている照生の姿を見てしまう。
嫉妬でプレゼントを捨てて走り去ってしまう葉。天気は土砂降りに変わっていた。
葉は大雨の中妻を待っているというジュンに会い、傘を貸してあげる。その後夫婦でそろって傘に入っている二人を見た葉は、もう一度照生と話をしたいと思いだす。
夜、馴染のバーでマスターとジェンガをしながら話をしていると、
「愛なんて逃げ道なんだから」とマスターに言われ、照生に会いに行くことを決心する葉。
びしょ濡れで照生のバイト先の水族館に到着した葉。真っ青な水槽の前で照生は葉をそっと抱きしめた。
「ずっと伝えたかったけど、、、伝えると壊れてしまいそうで。でもきちんと伝えたい。」と葉への気持ちを伝える照生。二人が結ばれた日だった。


2016年7月26日。照生の28歳の誕生日。
初めて葉と照生が出会った日。
この日は照生がダンサーとして出演する舞台の初日で、友人が出演している葉はそれを観に行っていた。終演後の打ち上げで友達に言えなかった正直な感想を照生に話す葉。
その内容はダンサーが合っていないというものであった。
直後サプライズパーティーが始まったが、葉は静かにその場を離れてしまう。通用路を出たところで鍵がかかってしまい、戻れなくなった葉はフェンスをよじ登ろうとしていた。
しかし、その場面に照生が遭遇し、何とか劇場を後にした。
お酒を片手にアーケードを歩く二人は、路上ミュージシャンの歌に合わせて回りだす葉と照生。この感情がこの先6年どう変わっていくのか全く知らない二人の姿。


時は戻って、2021年7月26日。
男性ミュージシャンがトイレから出てきた。迷い込んだ舞台で踊っていた照生に出口を教えてもらう。
出口を出たところでミュージシャンは照生に、
「昔、どこかで会ったことあります?」
と尋ねる。

照生はミュージシャンの背後に見えるタクシーが目に入り、
「はい、何度か、、」
と答える。静かに走り去っていくタクシーを見送った。

感想

この物語は6年間の「7月26日」を舞台に、年をさかのぼりながらカップルの出会いから別れまで描かれていて、そのポイントごとに誰もが経験する恋愛のもどかしさが散りばめられています。
恋愛のうまくいかないもどかしさと、うまくいっている時のワクワクした毎日の表情に、伊藤沙莉さんが非常にマッチしています。ちょっと重めの彼女ですが、とても似合っていて没入しやすかったです。若干10代のような部分もある役でしたが、その分共感できる方が大勢いるのではないかと思います。
池松壮亮さんの自己解決しようとして、連絡しないことや、それに対して伊藤沙莉さんが言う、「自分のための葉ちゃんのためなんでしょ。」という言葉がぐさぐさと刺さってしまいました。。。

よくある恋愛の失敗や男女の違いで共感できる部分が非常に多い映画だったと思います。
10代の頃の恋愛を痛烈に思い出させてくれる映画で、思い出してとても胸が苦しくなりました。
構成としても、別れるということが分かりながら、だんだん付き合いたての頃の楽しい時に戻っていくので、より心に響く物語になっていました。


単純な恋愛映画とは違い、キュンキュンだけでなく苦しさもある非常に良い映画だったので、ぜひ興味のある方は劇場でご覧ください!

最後までご覧いただきありがとうございました。

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